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メッセージ

(「池野成の音楽」CDブックレットより / 2007.8.13発売)
「池野成の音楽」CD制作にあたり
「池野成の音楽」
音楽評論家 丹羽 正明
 このCDレコード「池野成の音楽」は、池野さんを慕う多くの人達の熱い想いで出来上がったものですが、今回この音源が世に出ることは、池野さんを知る限られた範囲の人の心に、改めて追憶の火を点す縁となるばかりでなく、更に、わが国のオーケストラ音楽の歴史上に衝撃的な稔りをもたらした池野成という類い稀なる名匠の業績を、遍く後生に伝えるための貴重な史料の公刊という、大きな役割を担う事業となるものです。あれだけ独創的な表現を確立させ、正に手練れの作曲家と賞賛されるべき境地に達していながら、ご本人は世俗的な名声とはまるで無縁であり続けようとしておられた池野さんでしたので、その作曲家としての位置付けは、いわば知る人ぞ知るといった所に止まっていたように思えるのです。

 池野さんを私が個人的に存じ上げるようになったのは、東京音楽大学に同僚として勤務していた時からの事でした。伊福部昭先生門下の逸材で、先生からは特に厚い信頼を寄せられていたお一人とお見受けしておりました。高校時代にラグビー部のキャプテンをなさっていたという話は、ずいぶん後になってから私は知ったのですが、そのがっしりした体躯でありながら、何とも優しい物腰が印象的でした。お会いした折りになさる挨拶の様子が、体を強張らせるような、四角四面のお辞儀の仕方であったのも忘れられません。

 池野さんの業績の中には、映画音楽の占める部分が大きいのですが、これも師匠である伊福部先生の影響でしょう。映画音楽の仕事は、何しろ譜面に書いたものが直ぐに実際のオーケストラで演奏されるという、現場の仕事そのものですから、作曲者の抱いたイメージが現実の響きとして確認出来るのが何よりの強みです。その意味では、映画音楽の実践を経験した作曲家の立場は、何時訪れるか分からないチャンスをひたすら待つ純音楽とは、遥かに具体性が豊富です。かつて日本映画全盛時代に活躍した第一線の作曲家たちが書いたオーケストラ曲が、今の時代の若い人達の作品と比べて、技法の新旧の論は別として、筋金入りの実践的な手応えを感じさせているのは事実です。池野さんは、そうした背景を踏まえて、映画音楽にそして純音楽に、数々の名作を残された書き手でいらしたのです。

 池野さんの事は、私にはいつも伊福部先生を通して透かして見ていたようなところがあるのですが、ここでもう一つ、池野さんが伊福部先生の管弦楽のオーケストレーションのアシスタントをしておられたことが思い起こされます。それはちょうど、フランツ・リストの交響詩のオーケストレーションを、「カヴァティーナ」の作曲者として知られているスイスの作曲家ヨーゼフ・ヨアヒム・ラフ(1822?1882)が手伝って、曲の完成に貢献した事実を彷彿とさせる話であるように常々思っていました。

 池野さんの存在を後世に伝えるためには、今回のCD出版に加えて、池野さんの人間としてのユニークな行き方の全貌を伝える、言行録や伝記を纏める必要があるのではないかと思われます。
(にわ・まさあき)
先生から得た教訓
作曲家 藤田 崇文
「苦しいと思ったときは、『人間として生きている』という実感を噛み締めなさい」と私に語ってくださったのは、恩師・池野成先生でありました。
 世界一謙虚で、世界一辛口でした。そんな池野先生ですから純音楽作品は徹底しておられ、生前、常に映画音楽と純音楽の狭間で苦闘し、作曲家として長き冬の時代が続いたようにも思えます。そして2004年8月13日の暑い日に帰らぬ人となりました。「先生の音楽をもう一度聞きたい」そんな願いから「池野成メモリアルコンサート」を開催。多くの方々の誠意が結集し大盛況にて終幕しました。
  「池野成の音楽」CD発刊は、没後3年を期し、先生が生んだ力作を音源として後世に残し、映画音楽と純音楽の両面から集大成のひとつにしたく、想いを込めて制作いたしました。師なる先生には恥ずかしい思いをさせてしまうかもしれない。でも、日本現代音楽に生きた作曲家池野成の音楽と魂を、皆様へ伝えたいと祈念いたします。
  冬はやがて春となるように池野作品を追憶に留めるだけではなく、《EVOCATION》喚起する時代が必ず到来し、先生の大陸的な躍動感あふれる音楽が世代や民族を超え、貴重な音楽遺産になることを確信しております。
(ふじた・たかふみ)
感謝の気持ちを込めて
作曲家 和田 薫
 池野先生が旅立たれて三度目の夏を迎える。この間、多くの方々の想いが結集し、ここに「池野成の音楽」として実を結ぶことができたことを、まずは関係者の一人としてCD制作に関わった全ての方々に、深くお礼申し上げたい所存であります。
 2006年11月23日に開催された「池野成メモリアルコンサート」のライヴ音源と名作「電送人間」のオリジナル音源によるサウンドトラック収録によるこのアルバムは、作曲という業に対し真摯で、苦行なまでに自己を研磨する先生の、この世に残された貴重な遺言とも云えるでしょう。
 ある時は寡黙で、ある時は雄弁なまでに音楽にまつわるあらゆる諸行を我々に享受してくれた先生の作品を、「音」として後世に残すべくは、これからの日本音楽界の貴重な指針となるものと確信し、そして50年100年と演奏され続けることが、このアルバムに込められた想いでもあります。
 今は敬愛する伊福部先生とお仲間の皆さんとで、大好きな煙草をふかしつつ語り合われてることでしょう。表舞台に出ることを嫌われた先生でしたが、不遜な弟子達の仕業として、このアルバムを天上界の先生へ捧げたいと思います。
(わだ・かおる)
(「池野成の音楽」CDブックレットより / 2007.8.13発売)
「池野成の音楽」CD発売を祝し。
池野の音楽はいつまでも生き続けてほしい
作曲家 松村 禎三
 彼と初めて会ったのは芸大受験の時であった。彼と私は何でも語り合える親友になり、奇跡のようにこのことは五十数年間変わる事がなかった。自己顕示のために不完全な作品を発表することなどは到底考えられないことであった。池野の音楽が世の中にでることは親友として本当にうれしい。池野はもうこの世にはいないが、「池野の音楽」は今後いつまでも生き続けてほしい。
(まつむら・ていぞう)
池野成の音楽を称える
作曲家 今井 重幸
 此の度、小生と半世紀に渉る盟友であった孤高の作曲家・池野成の「メモリアル・コンサート記念CD」が、三回忌にあたる8月13日に発売になります。先の「池野成の映画音楽」に引き続き日の目を見る事は、小生にとって感慨深いものがあります。自己顕示を極度に嫌った池野は、多くの名作を残した映画音楽を別にして、彼の作曲活動は大変地味であった。今回は"Evocation"を始めとする特殊編成の3大名作が含まれる2枚目のCD、より多くの人々の耳に届く事を願って止まない。
(いまい・しげゆき)
池野成音楽集成を待つ
作曲家 三木 稔
 池野成は、年は私より一つ下だったが、芸大では1年上で、一番近い仲間だった。彼はその一生を通して、自らの才能を犠牲にしてまで人のために尽くした。彼がその稀に見るオーケストレーション能力を駆使して作品を書き続けていたら、日本がどれほど貴重なオーケストラ財産を持ち得たかと思うと、私は断腸の思いだ。ただ、昨年のコンサートの演奏による池野成の純音楽と編曲された映画作品がCDとして残されるのは、わずかながら救いと考えたい。
(みき・みのる)
「池野成の音楽」お祝いメッセージ
作曲家 永冨 正之
 池野さんは若い時から、ラテンアメリカ音楽などにみられる、リズムの強烈な生命力の表出に強いシンパシイを表明しておられた。それは邦楽などの日本の伝統的音楽風土にない、そのような音楽的風土の対極にあるような音楽であり、池野さんの音楽の立脚点となるものです。このような池野さんの音楽がCD化され、いつでも体験することができるのは素晴らしいことです。
(ながとみ・まさゆき)
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